Wine in, truth out.
一本、また一本と数百万の値が付けられているネオバサラの高級日本酒が空になっていく。お得意様用の個室の奥で眠兎の隣に座る姫は彼の太客であったが、水を飲み干すかのような勢いに流石に眠兎の身を案じていた。
「飲みすぎやない? そんなこと言わんとって。ウチ、まだまだ飲み足りないんや!」
叫ぶとまた一本、酒瓶を手に取り今度はラッパ飲みを始めた。決して下戸ではない眠兎だが、周りのヘルプ達もその飲みっぷりを心配し、麗夢か社を呼ぶかと耳打ちする。
「ウチがショーグンになれへんかったら、いつか権力持ったクソジジイ共の食い物にされてまう。こんな世の中おかしいやん? 飲まなやってられんやろ!」
ひとしきり酒を空けると、姫に寄りかかりながら世の中への罵詈雑言を漏らす。麗夢も社も、自分を見えない゛オトナの輪”の中には入れてくれない。ふたりがバックヤードで真剣な話をしている度に、自分の無力感に苛立つ。それでも眠兎は、こうして酒を飲み続けて姫との時間に陶酔することしかできずにいた。
「ハー……、ウチはまだ酔ってへんで! お姫ちゃん、もっと酒入れてや。そんで一緒に羽目外して、もーっと気持ちよーくなろ、な?」
(ナンバー死守するために飲むしかできん自分が嫌なる。でも、そうでもしないと誰もウチの事なんか見向きもせん。さっちゃんも死んでまうし、麗さんもやっさんも深刻な顔してばっかのミセランドなんて、お姫ちゃんと酒飲む以外の楽しみなんかあらへん。マジモンのクソや!)