The die is cast.
「ッシャ、ツモ!」
「まーた社さんツモりやがったー!」
夕食の支払いを賭けて後輩のホストと麻雀をしていた社が、手牌を開きアガりを宣言すると、他の三人はやられたとばかりに悔しさを表情にも口にも出した。
「お前らスジ読みばっかだからだよ。勝負は待ちの勘だよ、勘。コイツが来るはずってな。約束通り今日はお前らの驕りだぜ」
アガり牌の筒子を指で突きながら、社は上機嫌に酒を煽る。社の賭け事の強さは、ネオバサラで折り紙付きだった。
「はいはい、俺らの負けです。ほんと社さんは眠兎君以外には手厳しいですね」
「あいつはいいんだよ、もっと流行りの楽しい事してれば」
そう言って社が煙草に火を点けた所で、半開きの襖から人が入ってきた。襖に背を向けて座っていた社が振り返ると、そこには見慣れた傾奇者が立っていた。
「まあ、社がギャンブル好きなんて眠兎が知ったら自分もやるって聞かないだろうね」
「麗夢さん!」
「麗夢、いつから見てたんだよ……ったく」
ニヤニヤと社を見下ろした麗夢は、籠る副流煙を気にすることなく中に入り、社の横を陣取った。
「んだよ、お前も飯賭けて一局やるか?」
「そのまま麻雀でもいいけど、俺が勝っちまうだろ? 酒飲み同士チンチロリン一発勝負でどうだい」
キセルに火をつけた麗夢が、卓上の賽を摘まみ上げた数刻の後、社の悲鳴がネオバサラに響いた。