A night of "Living God"(生ける神のある夜)
漆黒のケープに金の髪を靡かせ、周囲に存在する全てがその風を受けて輝きだす。
──神、その名に相応しい立ち居振る舞いで、彼は今日もフロアに姿を現す、はずだった。
しかし、神と呼ぶには今の彼の表情はあまりに険しく、むしろ人間らしさを感じさせる。
「300万、それがイヴがお前に差し出した愛情だ! それに応えられるだけの価値が、
さっきの接客にあったと思うか? ……俺は思わない」
クロノスタシスにいる、とある新人のホストに言い放つ。
どこまでもストイックに、荘厳に部下を叱責するその姿は悪役にも勝るオーラを放っていた。
「ギル様、その辺で」
誰もが息をのむ空気の中、甘く凛とした声が響く。
傍で様子を見守っていたアルジャーノンがギルガメッシュを諫め、その場を収めた。
「あとは僕から指導しておくから、ギル様はイヴをお迎えに上がってね」
「……ああ、わかった」
新人のホストと盟友アルジャーノンに背を向け、客であるイヴの元へ向かって歩みを進める彼の表情は
すでに「神」に変わっていた。
宮殿を思わせる豪奢なエントランス、その先に待つ女性の前で歩みを止め
「神」は今日も宣う。
「ようこそ、クラブ・クロノスタシスへ。さあ、神との夜を始めよう」