Straight,no chaser.


それは、カールがたまたま居合わせた弟とバーで一杯交わした時の事だ。
恰好つけて頼んだであろうウイスキーのストレートをちびちび啜りながら、ソルがカールに尋ねた。

「オマエさ、最近雰囲気変わった？」

「……どうしてそう思うんだ？」

「別に、そんな気がしただけだ。前はグラサンとか付けなかったろ」

弟のソルは普段バカっぽいが、こういう野生の勘みたいなものは鋭い。
以前も、カールが独立をしようとしていることをピタリと言い当ててみせたのだ。
雰囲気を変えたつもりはカールにはなかったが、独立に向けて情報収集をしているうちに触れてしまった業界の闇のようなものに、少なからず影響を受けているのかもしれない。

「色々あって、オトナになったのかもな」

「フン。No.3のままの癖に、成長した気になってんなよ」

ソルは曖昧に答えるカールを鼻で笑ってから、持ち前の酒の強さを見せつけるかのように、ストレートのウイスキーを一気に煽った。

「オレは稼いで稼いで……進み続けるぜ。誰も追いつけないくらいにな！」

「……。珍しくいいこと言うな」

「笑ってんじゃねーよ、オレは本気だ」

たまに、この弟のこういう直向きさが羨ましくなる。
空いたグラスを掲げながら、カールはカウンターの店主に声を掛けた。

「マスター、コイツと同じのお願いします。チェイサーは無しで」

そしてカールはソルと競うように、ストレートを飲み干した。