two of a HOST never agree.


緋野天魔がその行きつけのバーを気に入っていた理由は、洒落た内装もそうだが静か過ぎない程々の喧騒が、ひとりでいても心地よかったからだ。

「あ、またひとりなの？　隣来なよ～」

それがどうしてか、先日偶然居合わせてしまってからというもの、度々アルジャーノンが店にいるようになっていた。今日もまた一杯飲んでから寝に帰ろうかと足を運ぶと、恐ろしい高さのハイヒールをプラプラと遊ばせながら笑って声を掛けてきた。

相席などゴメンだと一蹴しても引かないこの男に、半ば付き合わされる形で酒を飲むこと数回。恐ろしいほど飲み、喋るが、結局腹の底は見えないままだ。

「つかさ、なんでクロノの幹部サマが俺なんかと飲みたがるワケ？」

「ん～、カンパネラ傘下のクロノのホストとしては、君たちのやり方は見過ごせないよ。けどそれは、君と仲良くなれない理由にはならないよね」

どういうつもりなのかと問いかけても、表情ひとつ崩さずにアルジャーノンは答えるだけ。仮にもライバル店の同業者によく言えたものだと天魔は呆れた。

「あっそ。勝手にすれば」

「じゃ、ミセランドのお騒がせホストに……乾杯☆」

そうして何食わぬ顔でまた一杯カクテルを注文しては飲み干す。探りを入れるつもりなのか、ただのお人好しなのか。天魔には分かりかねるサングラスの下の微笑みが、彼の心をざわつかせていた。