A joker in the pack.
アフターの帰り、狙ったかのように鳴った着信音が酒で酔った統夜の頭を覚ました。ディスプレイに表示された名前は、喧しい上司だった。
「──はい、統夜です。はい、天魔は相変わらず好きにやってますよ。ええ、安心してください、悪さはさせませんから」
お偉いさん達は、クラブでNo.1である天魔の人気と売上っぷりを喜ぶと同時に恐れているのか、こうして連日統夜が手綱を握っているのか連絡を入れてくる。ひと通り話が終わると、これからもよろしくと天魔の見張り役と、とある“お使い”を押し付けて一方的に通話は切られた。
「ボケジジイが……」
未収はないか? トラブルは起こしていないか? そんなこと、本人に聞けばいい。
それでも統夜がこうして聞き分けの良い部下を演じるのは、こうして築いた偽りの信頼の先に巨万の富を見据えているからだ。
DJが始めた一攫千金のゲームだって、結果が出たら終わりなわけがない。
ミセランドのマネーゲームは、永遠に続いてくのだから。
「天魔もキースも、ジジイ達も……好きにしていればいい。僕は僕のやり方でトップを目指す」
不敵な笑みを浮かべたジョーカーは、頼まれた“お使い”を果たすべく、ミセランドの雑踏に消えていった。